82年にレコメンディッド・レコーズのレーベル紹介を目的として制作された2枚組サンプラー。英米の従来のロックとはひと味違うアヴァンギャルド・ロックをヨーロッパ各国を中心に幅広く集め、その多彩で斬新なサウンドが大きな反響を呼んだ伝説のオムニバス。
いわゆる「レコメンディッド系」のバンド以外にも、彼らのルーツとなった先駆者(ロバート・ワイアット、ファウスト、ザ・レジデンツ)や先鋭的なポスト=パンク・バンド(ディス・ヒート、ザ・ワーク、ザ・ホモセクシャルズ)なども収録されており、アヴァンギャルド・ロックの諸相をヴィヴィッドに切り取ったドキュメントになっている。収録曲のほとんどが本作のために録音されたオリジナルの新作だったため楽曲の権利関係が複雑で、「歴史的名盤」にも関わらず長らくCD化されず、オリジナルLPは中古市場で高価なレア盤となっていた。リリースから26年を経て、これが初めてのCD化となる。
ヘンリー・カウのクリス・カトラーが78年に設立したレコメンディッド・レコーズは、商業主義とは無縁の革新的な音楽を自主制作する世界中のインディーズ・バンドを意欲的に紹介した。彼らの風変わりなアヴァンギャルド・ロックはその制作姿勢と音楽性の傾向から「レコメンディッド系」「レコメン系」などと呼ばれ、英米のメインストリームのロックやプログレッシヴ・ロック、メジャーのパンク/ニューウェーヴに飽き足りないリスナーの関心を集めて熱心な愛好家を生み、一部のミュージシャンにも大きな影響を与えた。
レコメンディッド・レコーズの音楽的マニフェストとも言える本作は「レコメン系」を知る絶好のガイドとなる。ロックの革新を目指し、クラシックや現代音楽、実験音楽、民族音楽、伝統音楽などの語法や理論を大胆に取り入れて、ロックの新しい可能性を追求した楽曲の数々は、今あらためて聴いても実に刺激的でユニークなものだ。「レコメン愛好家」にとっては待望のCD化であり、初めてのリスナーにとっては驚きと発見に満ちた未知の領域への道しるべとなるだろう。
(解説:坂本 理、訳詞付き)。
〈トラック・リスト〉
フォーゲル(スイス)"Bottle Train" >>試聴する
ファウスト(独)"The Voice of the Pumpkin (Extract V from Faust Party 3)"
アート・ベアーズ(英)"All Hail!"
ストーミー・シックス(伊)"Reparto Novita" >>試聴する
ザ・ホモセクシャルズ(英)"Walk Before Imitate"
ジョゼフ・ラカイユ&パトリック・ポルテラ(仏)"On ne peut plus compter sur ses doigts"
フェリウ・ガスール(スペイン)"*" >>試聴する
ザ・ブラック・シープ(オランダ)"Strangelove"
ユニヴェル・ゼロ(ベルギー)"Influences" >>試聴する
アクサク・マブール/ハネムーン・キラーズ(ベルギー)"Bosse de crosses"
ザ・ワーク(英)"Houdini"
ヘンリー・カウ(英)"Slice / Viva Pa Ubu"
デシベル(メキシコ)"Extract from radio broadcast" >>試聴する
アート・ゾイド(仏)"Simulacres" >>試聴する
ザ・マフィンズ(米)"2 from Chronometers" >>試聴する
ハイナー・ゲッベルス(独)"Berlin Kudamm 12 April 1981."
エイモス&サラ(英)"Steer Clear of England"
コンヴェンタム(カナダ)"Commerce Nostalgique" >>試聴する
エクトール・ザズー(仏)"Vera C"
ディス・ヒート(英)"Pool"
ザ・レジデンツ(米)"Walter Westinghouse" >>試聴する
R.スティーヴィー・ムーア(米)"Pedestrian Hop / Follow Me" >>試聴する
ロン・ペイト(米)"I talk to my haircut" >>試聴する
ピッキオ・ダル・ポッツォ(伊)"Uccelini del Bosco"
ロバート・ワイアット(英)"The Internationale" >>試聴する