ニュージャージーの自宅で70年代から膨大なポップ・ソングを録音し販売し続けている自称「不遇の天才」。カセット、レコード、CDそしてCD-Rと、現在までに400作（！）を越えるアルバムをリリースしている。商業的成功とはほど遠い長年にわたる常軌を逸した「だだ洩れ」的創作活動はアウトサイダー・アートを思わせるが、各種ポップ・ミュージックのツボを知り尽くした曲作り／音作りの才は本物。これは1976年の記念すべきファーストLPのリマスター再CD化。すべての楽器を自分で演奏して歌い、二台のオープンリール・レコーダーのピンポン録音で作り上げた、ときにビーチ・ボーイズを思わせるキャッチーな17曲。曲間に語り（一人芝居）を挟みながらテンポよく聴かせる工夫もされている。お世辞にも上手いとは言えないヴォーカル＆コーラス、一人演奏が醸し出す自家中毒的閉塞感、ロウファイ録音ゆえのチープなサウンド。こうした拭いがたい手作り感と、どこかネジがはずれている間抜けさが、ハマると癖になる絶妙な魅力になっている。まぎれもない「天才」。

R．スティーヴィー・ムーアの公式サイト
http://www.rsteviemoore.com/