「ラ・ヴォア・デ・シレーヌ(=人魚たちの声)」はアコースティックなトラッド/フォークを奏でる現代の吟遊詩人たちの作品をリリースするフランスのマイナー・レーベル。アコースティックで素朴な路線を踏襲しつつ、アヴァンポップ系の作品もリリースし始めた。ニュー・リリースはトイポップの人気者クリンペライの、初期を思わせるセンシティヴな新作。
クリンペライ/KLIMPEREI "Quai des hannetons"
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デュオ時代を彷彿とさせるメランコリックなアコースティック・サウンド
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ピアノやギター、リコーダー、ハーモニカ、ウクレレ、トイ・ピアノ、各種おもちゃなど、このレーベルのために久々にアコースティック楽器のみを使って録音した新作『コガネムシ波止場』。クリストフ・ペッチャナのソロ・ユニットになってからは健康的なノリのよさが目立っていたクリンペライだが、今回はフランソワ・ルフェーヴルとのデュオ時代を彷彿とさせるメランコリックで儚く、夢幻的な、かつてのサウンドがより洗練された形で蘇っている。実際に数曲でデュオ時代の音源も使われており、初期のクリンペライが好きな人にはたまらないはず。推薦盤。 |
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クリンペライ/KLIMPEREI | La voix des sirenes | 2,310円 | |
Quai des hannetons | '10 | VXSIR 008 |
リオネル・ボワッサリー/LIONEL BOISSARIE | In Poly Sons | 2,100円 | |
Ungawa | '06 | VXSIR 003 |
リコーダーやメロディカ、アコーディオン、ハーモニカ、口琴、コントラバス、カリンバなど、民族楽器やおもちゃを含むアコースティック・アンサンブルと、混声コーラス隊による無国籍ジャム・セッション、のように聴こえるが、実は個人の自宅多重録音作品。パターンを繰り返す演奏を楽器を持ち替えながら直感的に重ねていき、自分の声を加工した擬似混声コーラスをかぶせて作った21曲。音の出るおもちゃを与えられた子供の合奏のようでもあり、未開部族の儀式音楽のようでもあるが、プリミティヴ・アートを思わせるユルくてダルい幻惑的なサウンドには民族音楽やトラッドや古楽など様々な要素が含まれている。タイトルの「ウンガワ!」はターザンが発する決まり文句。>>試聴する1 >>試聴する2 |
V.A.(機関誌+CD-R)/V. A. | In Poly Sons | 2,520円 | |
La voix des sir熟es: Num屍o 1: automne 2009 (Magazine + CD-R) | '09 | VXSIR 20091 |
レーベルの名前を冠した手作り感あふれる機関誌の創刊号(A4版36ページ、フランス語)。CD-R付きでわずか100部の限定発行。英国トラッド界の異才ピーター・ベラミー、ギリシャの民衆歌謡レンベティカの黎明期、フランスのトラッド音楽考察、ザ・ハフラー・トリオ論、音楽と聴覚、個性的なレーベルとレコード店に対するインタヴュー、レコード・レヴューなど、扱うジャンルは民族音楽/伝統音楽とノイズ/音響系だが筋が通っている。レーベル周辺の音楽家集団 Musiques Immediates (=無経由音楽)の作品を収録したオムニバスCD-Rには、音響+ヴォイスのカットアップ、エレクトロ・ポップ、鳥の声+コンクリート・ノイズ、アンビエント、ダブ、フォークなど、アコースティックとエレクトロニクスを組み合わせた意欲的な作品が並ぶ。機関誌のミニコミ然とした作りといい、オムニバスのサウンドといい、自主制作が活発だった80年代を思わせる。>>試聴する1 >>試聴する2 >>試聴する3 |